先日書いた記事のなかで、古いレンタルサーバでRust等のビルド済みバイナリ(実行可能ファイル)を動かすとき、Rust musl以外はGLIBCのバージョンが噛み合わずに( libc が動的リンクされているために)動かないという話を書いた。かつ、muslであっても、 /lib/ld-musl-x86_64.so.1 に動的リンクされるようになっていると、ルート権限のないレンタルサーバでは当然動かない。

先日は諦めてRustを使ったのだけれど、Odin言語で遊んでいたところ、以下の記事によって解決した。すごく嬉しい。

https://gaultier.github.io/blog/odin_and_musl.html

流れとしては、

  • muslを先にビルドする
  • いきなり exe 等を出力せず、まず .o (オブジェクトファイル)を出力する
  • リンカを使って、できあがった .o とmuslのオブジェクトファイルをリンクさせて exe 等を作る

という流れになる。以下、一つ一つ説明する。今回はOdinを例にとっているが、Odinでなくても良い。(普通のC言語でもなんでも、.o が出力できるものなら可。)

muslで lib/crt1.o と lib/libc.a を作る手順

先の記事中では arm ターゲットになってしまっているので、x86_64ターゲット、つまり非クロスコンパイルの場合、以下のようになる。

※ 実行前に sudo apt install llvm-dev 等が必要。前記事中にあるようにLLVMではなくGNU GCCを使うようにもできるらしいが割愛。

$ git clone --recursive --depth 1 https://git.musl-libc.org/git/musl
$ cd musl
$ RANLIB=llvm-ranlib AR=llvm-ar CC=clang ./configure --disable-shared
$ make -j 12

こうすると、lib/crt1.olib/libc.a ができる。この2つが超重要。

オブジェクトファイルをリンクする (Odinの場合)

実際、Odinの場合はどうなるかを説明する。以下のHello Worldを例にとる。それでもOdinの場合は .o (オブジェクトファイル) は大量にできるので、フォルダを分けて出力させている。(実際はC言語でもなんでも .o が出力できれば良いので、C言語のHello Worldを例にとっても良い。その場合はGCCでコンパイルすればOK。)

package main
 
import "core:fmt"
 
main :: proc() {
    fmt.printf("hello from odin!\n")
}

上の hello.odin が、hello/main.odin として配置されている(例えば ~/dev/odin-test 内など。場所は何でも可)と仮定して進める。

$ mkdir build
$ cd build
$ odin build ../hello -build-mode=object
$ ls
 
# hello-runtime-error_checks.o
# hello-bufio.o                                 hello-runtime-heap_allocator.o
# hello-builtin.o                               hello-runtime-heap_allocator_unix.o
# hello-bytes.o                                 hello-runtime-internal.o
# hello-fmt.o                                   hello-runtime-os_specific.o
# hello-io.o                                    hello-runtime-os_specific_linux.o
# hello-main.o                                  hello-runtime-print.o
# hello-math.o                                  hello-runtime-procs.o
# hello-mem.o                                   hello-runtime-random_generator_chacha8.o                               hello-runtime-random_generator_chacha8_simd128.o
# hello-os.o                                    hello-runtime-udivmod128.o
# hello-reflect.o                               hello-strconv.o
# hello-runtime-core.o                          hello-strconv_decimal.o
# hello-runtime-core_builtin.o                  hello-strings.o
# hello-runtime-default_temp_allocator_arena.o  hello-time.o
# hello-runtime-default_temporary_allocator.o   hello-unix.o
# hello-runtime-dynamic_map_internal.o          hello-utf16.o
# hello-runtime-entry_unix.o                    hello-utf8.o
 
$ ld.lld *.o ~/dev/musl/lib/libc.a ~/dev/musl/lib/crt1.o -o hello-odin-musl
 
$ ./hello-odin-musl
$ # hello from odin!

補足として、ld.lld は LLVMのリンカで、sudo apt install lld 等でインストールできる。ただ、LLVMである必要はないはず (GNUの普通の ld でも良いはず) だが、先の手順でLLVMで作っているので、GNUの場合はそちらもあわせたほうがいいのかもしれない。

また、先でできた lib/libc.alib/crt1.o のパスは別の場所から呼んでいる (今回は ~/dev/musl に配置。)

これで、libc が静的リンクされたバイナリが完成するので、古いレンタルサーバや古いPCでも問題なく動作する。(このためだけにわざわざRust muslを使う必要がなくなって、とても嬉しい。)

バイナリサイズが大きいかもと心配したけれど、今回は 368KB だったので現実的なサイズかなとは思う。もっと小さくしたい場合はコンパイラオプションを詰めたりいろいろしないといけないのかも。


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